庭のある空間の効用-2 高齢者住宅新聞コラム

さて、設計に先立ち、デザインマーケティングなどで使われる手法を用いて、調査・研究を行いました。アンケートやヒアリングなど、幾つかの調査を通じ、庭の整備として必要な環境や空間の特性を拾い上げ分析しました。そこで浮かび上ったのは、屋外空間は「心身に効果のある環境」として重要で有り、庭には「鑑賞」「散策」「リハビリテーション」の3つの機能が求められているという事です。
「鑑賞」「散策」「リハビリテーション」の3機能ですが、別々に整備するのでは無く、それぞれが相乗効果を生むデザインをする事が重要です。例えば、散策路の周辺には季節毎に異なる花の咲く植栽を植え、鑑賞する為のベンチを置きます。花を見たい思いが、散策する目的となります。また、距離の異なる散策路をつくり遠くに咲いている花・樹まで歩く事で、自然にリハビリテーションになります。この様に、花を観賞する事で心を癒し、歩く事でリハビリテーションになる。自然に生活しているだけで、療法になるデザインが求められます。
高齢者施設は、特養・老人ホーム・高専賃等、それぞれ目的・機能が異なる部分が有りますが、共通しているのは、完全な病院では無い、けれど普通の住まいでも無いという事です。ある種、曖昧な用途であるが故に、如何にも療法していますと言った、リハビリ施設は、住むには少し馴染みづらい。生活を楽しむ仕掛けと、楽しんでいるだけで、療法的効用がある整備が馴染みます。
住まいとして自然に居られる環境として、もう一つ気を付けたいのが、車との関係です。車というのは、高齢者にとって暴力的な存在ですから、人の生活する処と離したい。庭や個室から見えない処に車路や駐車場を配置したり、駐車場をアスファルトで無くブロック付の芝貼りにし自然を感じさせるなど工夫が必要です。サンシャインヴィラつくば倶楽夢では、車路を蛇行させる事で、車のスピードを落とし、安全で、外の領域から、生活領域へ心が移り変わるしかけをしています。
この様に、自然にすごし、高齢者の心と体に効果のある庭を造る事で、老人ホーム・高齢者住宅として、付加価値の高い環境が形成されます。
(高齢者住宅新聞 庭で入居者満足度向上 第1回コラム より 小木野貴光 著)
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